シャトー・アンジェリュス

サン・テミリオンのテロワールを体現する1本
“祈りの鐘”をラベルに携える
サン・テミリオンの高品質ワイン
シャトー・アンジェリュスの紹介

シャトー・アンジェリュスはサン・テミリオンの鐘楼からわずか1キロ足らず、南斜面のピエ・ドゥ・コート(ケスタの麓)に居を構えるワイナリーです。
アンジェリュスのぶどう畑は、天然のアンフィテアトルム(円形劇場)状の丘陵の中央に位置し、取り囲むようにそびえ立つサン・テミリオンの3つの教会に守られています。
すり鉢状の土地は音が反響しやすく、朝の鐘、午後の鐘、晩の鐘の音が遠くまで響き渡ったということです。アンジェリュス・ベルの音は村やぶどう畑で働く人々の一日のリズムを刻み、誰もが鐘の音とともに仕事の手を休め、祈りのひとときを捧げたと言われています。
サン・テミリオンの中でも人気を誇ったアンジェリュスは、特に1985年移行に飛躍的に品質を向上させたと評価されています。当時の格付けシャトーには珍しく最新の手法を取り入れるなど、熱心に革新に取り組み安定した品質のワインを生み出し続けています。
シャトー・アンジェリュスの歴史

アンジェリュスの歴代当主であるブアール・ド・ラフォレ家の始まりは18世紀末にまで遡ります。1782年、王の衛兵であったジャン・ド・ブアール・ド・ラフォレが、サン・テミリオンに定住。その娘のカトリーヌが、1795年に結婚した夫の所有地であるマズラのぶどう園に移り住みました。このぶどう園こそがシャトー・アンジェリュスの起源となります。
その後20世紀初頭、モーリス・ド・ブアール・ド・ラフォレがこの土地を相続し土地拡張を続ける中、1920年にはアンジェリュスと名付けられた3haの囲い土地を購入します。やがて1945年になると、この地はモーリスの息子たちに受け継がれました。息子のジャックとクリスティアンは、父が祖先から引き継いできたワイン醸造の家業を受け継ぎました。
アンジェリュスがその歴史の中で最初に格付けの認定を受けたのは1954年に遡ります。サン・テミリオンで初めての格付けが行われ、当時すでに高い名声を受けていたアンジェリュスはグラン・クリュ・クラッセに認定されました。この格付けと高い評価によって、その後訪れる1973年のボルドーワイン危機による価格暴落の混乱を乗り越えることができたと言われています。1980年代にはボルドーワインの醸造法改革に参加し、ぶどうの選果の徹底化、樽熟成へのこだわり、そして醸造学者の導入などに力を入れた結果ワインの品質を大きく向上させました。その後ボルドーワインの父と言われるエミール・ペイノー博士の下で学んだユベール・ド・ブアール・ド・ラフォレが1985年に7代目当主に就任し、シャトーは更なる革新を遂げていきます。この頃にはアンジェリュスは20haを超える広さにまで畑を広げています。
1996年にはサン・テミリオン第1特別級B、さらには2012年に第1特別級Aに昇格しました。現当主の娘ステファニー・ド・ブアール・リヴォアルが経営に携わるようになったのはこの年からです。
現在アンジェリュスのゼネラルディレクターに就任したステファニーは、ブアール・ド・ラフォレ家の8代目として、アンジェリュスの代表を担います。女性としては、1800年のカトリーヌ・ソフィー・ド・ブアール・ド・ラフォレ、そして1900年のウジェニー・シャトゥネに続き3人目の当主となり、生まれ育ったシャトーを統率します。ステファニーにとってアンジェリュスとは、彼女の血肉そのものであると言っても過言ではありません。この地で生まれアンジェリュスに愛情深く育まれたステファニーは、2022年の格付け撤退後も尚、アンジェリュスの品位と品質を維持するべく、弛まぬ努力でシャトーの名声を支えています。
シャトー・アンジェリュスの特徴

アンジェリュスのぶどう畑は、サン・テミリオンの南側のピエ・ドゥ・コート(ケスタの麓)にすり鉢状に広がっており、夏季は熱気が溜まりやすく、ぶどうの成熟を早めます。丘陵の斜面にあるため自然な水はけが良く、日当たりも抜群のテロワールでぶどうを栽培しています。畑は、カルシウム粘土質に砂が混じった区画と、カルシウム粘土質の区画の2つのタイプに分かれています。また、メルローに適した粘土石灰質の土壌と、カベルネ・ソーヴィニヨンに適した砂や砂利の多い土壌を所有しているため、2つのぶどうはそれぞれ最良のテロワールで育ち高い品質を保っています。アンジェリュスの擁するメルローの平均樹齢はおよそ40年で、最古の樹は1918年に植えられています。メルローを53%、カベルネ・フランを46%、カベルネ・ソーヴィヨンを1%とすることで、年によってどちらの品種がより成熟しても対処できるようになり、品質を安定させる役割を果たしているのです。
シャトー・アンジェリュスの象徴と言えば、誕生当初より変わることなくラベルに描かれているアンジェリュス・ベルと呼ばれる祈りの鐘が有名です。祈りの鐘の起源は15世紀まで遡ります。1456年7月21日、神聖ローマ帝国がオスマン帝国軍との戦いで勝利したことを神に感謝する証として、当時のローマ教皇であるカリストゥス3世が『キリスト教会のすべての鐘を毎日朝、昼、夕の3回鳴らすように』と命じました。この祈りは『アンジェリュス』と命名され、ローマ帝国のキリスト教会で厳格に守られてきました。シャトーの名の起源となったこの鐘は、祈りと瞑想の時を連想するシャトーの象徴でした。黄金をまとう鐘、バロック調の文字、様式美の光るデザインなど洗練されたデザインは、当時から伝統的なボルドーワインのエチケットと比べ一線を画していました。一族の揺るぎない歴史の証人となり続けるこの鐘は、シャトーの真のアイデンティティと個性を体現するものとして描かれ続けています。